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社会変化に対応する新しいオフィス

投稿日|2022年4月13日 (更新日:2023年11月8日)

近年、働き方の多様化によって、労働を取り巻く社会情勢は大きく変化しています。この変化に対応する方策の一環として、新しいオフィスのかたちを考える企業が増えてきています。 この記事では、そのような社会の変化と、その変化に対応した「新しいオフィスのかたち」について解説します。

1.労働を取り巻く社会情勢の変化

 私生活を顧みず労働に打ち込む「モーレツ社員」の時代も今は昔、現在ではワークライフバランスを大切にした働き方が重要視されています。優秀な人材を確保するためにも、企業には多様な働き方のニーズに応える柔軟な制度の整備が求められるようになりました。従業員の自宅や、通勤に便利なサテライトオフィスを活用したテレワークの導入はその代表例と言えます。
 2020年からは、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するための施策として、多くの企業で在宅ワークの導入が急速に進みました。東京商工リサーチの調査によると、最初の緊急事態宣言から1年が経過した2021年3月の時点でテレワークを導入している企業の割合は、大企業で69.2%、中小企業でも33.0%と高い水準を保っています。
 近年ではパソコンの性能向上、高速インターネットの整備、様々なクラウドサービスの充実等によって、一般の家庭でも業務が行える環境が徐々に整ってきました。このような技術的背景も、状況に応じて従業員の自宅などを活用する柔軟な勤務方式への移行が進んでいる理由の一つと言えるでしょう。

2.オフィスの役割

 在宅ワークの新しい働き方が普及してきたことで、全従業員が集まって業務を行う場という旧来のオフィス像の見直しを行う企業も増えてきています。
 例えば、早くからテレワークの導入に取り組んできたGMOインターネットグループ会長兼社長の熊谷正寿氏は、テレワークとオフィスを併用する「ハイブリット」型の働き方が必要、これからのオフィスには単なるワークスペース以上の役割があると述べています。つまり、テレワークによって減少しがちな社員間のコミュニケーションの充実や、会社への帰属意識や誇りの源泉となる「象徴」としての役割です。
 また、パーソル総合研究所の調査によると、テレワークによるコミュニケーション不足の不安は、意外にも若い世代ほど強くなることが分かっています。人間関係の構築途上である若い世代には、対面コミュニケーションが必要とされているようです。

オフィスビル

3.オフィス戦略の位置づけ

 新しいオフィスの考え方においても、オフィスがワークスペースとしての機能を失うことはありません。しかし、テレワーク導入などの働き方の変化は事業者がオフィスのあり方を見直すきっかけになります。
 例えば、営業部門と総務部門が同じオフィスに集約されている必要はあるのかという疑問が考えられます。営業に適した好立地のオフィスは、テレワークが可能な事務作業を行うための場としては割高となる場合もあります。
 また、オフィス賃料の負担を抑えようというトレンドの一方で、あえてこのタイミングでオフィスへの投資を拡大する企業もあります。有名企業のオフィスが連なるビジネス街にオフィスを構えることで、企業の信用度やイメージアップを図り、従業員のモチベーションを向上させる狙いが考えられます。
 さらに、事業拡大や人材の獲得に力を入れるスタートアップ企業にとっては、オフィス需要が流動的なタイミングこそハイグレードなオフィスに手を伸ばす好機といえるでしょう。

 

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4.企業の成長段階に併せた課題

 企業は持続的な成長と適切な利益を生み出すため、成長段階に応じた取り組みや課題解決があります。この課題をどう対応するか成長のカギと言えるでしょう。

【企業・開業期】概ね創業5年以内(ベンチャー)。
 事業を改善しながら、認知度を高め、ビジネスモデルを確立することが重要。
【成長期】事業が軌道に乗り始め成長が始まる時期。
 組織拡大のため、経理・広報・人事などのスペシャリスト、多額の資金調達を確保することが重要。
【安定期・成熟期】事業が安定してくる時期。
 全国展開、株式上場、新たなビジネスモデルの構築や新規事業への取り組みが重要。
【衰退・再成長期】安定期を過ぎ業績が悪化する時期。
 事業や組織の再編、戦略の見直しが重要。

5.まとめ

 近年、事業者は成長段階に併せたリスクの少ない柔軟なオフィスを求めています。
 というもの日本の商慣習には、企業がオフィス開設の決定を難しくする要素が多く存在するからです。例えば、一般オフィスの賃貸借契約締結は数年間の契約期間が設けられ、契約期間中の解約には違約金が設定されます。また、契約時に必要な保証金(または敷金)は月額賃料の6~12ヶ月分が相場とされています。さらに、退去時には原状回復費用として坪当たり3~12万円程度(※ミニ情報)が必要になると見込まれます。
 最近では、このような商慣習にとらわれない、レンタルオフィスやコワーキングスペースという新しいオフィス形態(シェアオフィス)が注目を集めています。一般オフィスと比べて初期費用や退去時費用を安価に抑え立地やサービス面でメリットの多い新しいオフィス形態は、企業の各成長段階に応じて活用されています。例えば、起業・開業期のスタートアップオフィス、事業エリア拡大に伴う支店・営業所、短期プロジェクト用オフィスなど必要な期間に、必要な広さのオフィスを素早く確保することで、企業は留まることなく成長できるでしょう。

 ※ミニ情報 
 オフィス事業を手掛けるKOKUYOの調査によると、1人当たりのオフィス面積の平均は約8.55m2 ≒ 2.56坪 (2013年時点) 。原状回復費用の相場に当てはめると、坪単価3万円の場合で7.7万円×従業員数の費用が必要となる。坪単価12万円であれば30.7万円×従業員数となり、企業にとっては非常に重い負担となることが分かる。

 

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