フリーアドレスの基本を知る

フリーアドレスとは、前述でも説明した通り従業員に固定の席を設けない方法です。1987年に日本の企業で試験的に導入され、その後コロナによりテレワークが普及したことで、フリーアドレスに対して注目度が高まるようになりました。
ICT(情報通信技術)が進化したことも大きく、モバイルツールの普及や書類のデジタル化、クラウド管理などテクノロジーの進化が影響しています。物理的な阻害要因がなくなったことも、大きく影響していると言えるでしょう。
書類や文房具などオフィスに必要なものは、共有のキャビネットに保管しておきます。固定のデスクトップPCを使うのではなく、ノートPCに無線LANを合わせて使用するなど、場所に囚われない働き方を実現します。
▶なぜ今、フリーアドレスが注目されているのか
フリーアドレスは、比較的昔からオフィスの形としてありますが、注目されるようになったのはここ数年のことです。
コロナや政府が推進した「働き方改革」によりオフィスだけではなく、自宅やコワーキングスペース、レンタルオフィスなど場所を問わない、柔軟な働き方が求められるようになりました。
現在では、ハイブリッドワークや、ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング…個々の業務内容等に合わせて最適な場所や時間、環境を自分で選択する働き方)など多様な働き方が選択できる企業も増えています。
フリーアドレスを導入することで、従業員の満足度を高めることにも繋がります。また、天候の悪い日や子育て中の女性など、オフィスに出社せずに仕事ができるのは、大きなメリットと言えます。
▶導入が進む背景と企業が抱える課題
フリーアドレスを企業が進めている背景には、さまざまな課題が関係しています。従来の固定席になってしまうと「社員全員分の座席を用意」する必要が出てきます。
そのため、ある程度規模の大きなオフィスを用意しなくてはいけないため、維持費もかかるようになります。部署によってもオフィスの使用率は変わり、営業部のように外回りが多くほとんど席を使わないケースもあります。
使用状況にあわせたオフィスを選べるようになるため、スペースを有効的に使用できます。空いたスペースを、従業員のリフレッシュスペースにしてみる、WEBミーティングブースのように、調整することも可能です。
フリーアドレスを導入することで、従業員同士のコミュニティの活性化に繋げることも可能です。企業にとっても、優秀な人材を確保するためにも、柔軟な働き方を実現したいと考えています。
フリーアドレスの導入は、従業員の満足度を高めることにも繋がります。
フリーアドレス導入のメリットとオフィスに起きる変化
フリーアドレスを企業が導入することで、さまざまなメリットが期待できるようになります。今までオフィスが抱えてきた問題を解消することにも繋がり、オフィス内の環境も変わってきます。フリーアドレスを導入することでどのようなメリットが期待できるのか、詳しく見ていきましょう。
▶偶発的なコミュニケーションを生む職場づくり

フリーアドレスを導入することで、従業員同士の偶発的なコミュニケーションを生む環境づくりに繋がりやすくなります。部署の垣根を越えて、その日によって異なるさまざまな人との会話が生まれやすくなります。
チームの中に固定しがちなコミュニケーションが柔軟にできるようになるため、新しい情報が入りやすくなりアイディアへと繋がりやすくなります。コミュニケーションの機会を自然と増やせるのも、フリーアドレスの特徴です。
▶オフィス空間を「柔軟に使う」発想
固定の席とは違い、オフィス空間をその時の需要に合わせて柔軟に調整できるようになります。仕事に集中したいときはブースを使う、集中しやすい場所に移動する方法もあります。会議室以外にコミュニティスペースを作ってもいいでしょう。
仕事の内容に合わせて、その日に最適なスペースを選び利用できます。オフィスの形に囚われることなく、できる限り柔軟に使う発想を持つことで、選択肢を広げることにも繋がります。
▶業務効率とチーム連携の向上
フリーアドレスを導入することで、従業員の生産性を高めることができます。
業務内容に合わせて働く場所を選択するのはもちろん、従業員の主体性を促せます。自分の業務に合ったスペースを用意することで、仕事に対しての意欲を高め満足度の向上にも繋がりやすくなります。
チームごとに異なる仕事をしていると、思うように連携できないこともあります。その点、フリーアドレスはチームごとの繋がりを作るメリットも期待できます。
▶コストだけでなく、働き方全体を最適化
フリーアドレスを導入すると、オフィスの最適化も期待でき、使用していないスペースを削減できます。
オフィス利用率が低い会社は、思い切って規模の小さなオフィスに縮小してもいいでしょう。オフィスを維持するコストの見直しもできます。また、オフィスの働き方全体を最適化するきっかけにもなるため、従業員の働き方改革を進めたい会社にもおすすめです。
フリーアドレス導入のデメリットと起こりやすい落とし穴
フリーアドレスは導入するメリットがたくさんある一方で、デメリットも少なくありません。特に今までと異なるオフィス形式にすることに、従業員のなかでも、さまざまな意見が出てくると思います。フリーアドレスを導入すると、どのようなデメリットが起こりやすいのか、詳しく見ていきましょう。
▶居場所が見つからない問題と心理的負担
従業員によっては、席が固定されないフリーアドレスによる心理的負担を感じてしまうケースも少なくありません。
オフィスの混雑具合によっては、希望の席が見つかりません。集中して作業したいと思っているのに、コミュニケーションスペースしか、空きがない場合もあるでしょう。また、フリーアドレスになると、誰がどこにいるのか探す手間も出てきます。相談したいことがあっても、居場所を見つけるまでに時間がかかってしまいがちです。
出社したものの、チーム同士の話し合いが思うようにできずフリーアドレスが負担になってしまうこともあります。中には自分の居場所がないと感じてしまうこともあるでしょう。
▶座席や備品を管理するための工夫
フリーアドレスは、座席や備品の管理が難しい問題も出てきます。今まではデスクにしまっていたため、固定されたスペースがありました。座席を変えるたびに移動させなくてはいけなくなるため、持ち運びが負担になってしまうこともあります。
フリーアドレスになると、座席管理が難しくなり出社しているかどうかを把握しにくくなります。上司にとっても、部署の従業員の状態を把握できなくなり対策が遅れることも考えられます。
▶持ち物管理・情報管理におけるリスク
デスクがない分、持ち物の管理や情報管理がしにくくなります。なかには家に書類を持ち帰ってしまい、紛失のリスクも出てきます。デスクがあれば、ある程度どこに置いたのかを把握できますが、フリーアドレスだと毎回業務スペースが変わる可能性もあるため、探し出すのも大変です。
持ち物をどのように管理するのか、情報の取り扱い方についても社内で共有し認識に差がでないような対策をしていきましょう。
▶集中できる環境をどう確保するか
フリーアドレスでは、集中しにくい環境になってしまう可能性も出てきます。自由に席を決められるスペース以外に共有スペースが設けられています。そのため、人が集まり往来も多くなってしまいます。
集中したいと思っても、人の話し声が気になってしまい仕事ができなくなってしまう人もいます。急ぎの仕事を片付けたいときや、集中して作業をしたい従業員向けのスペースを、どう確保するのかも大きな課題と言えるでしょう。
会話禁止の集中したい人向けのスペースを作るなど、誰でも仕事がしやすい環境を作ることも大切です。
失敗しないためのフリーアドレス運用戦略
フリーアドレスを導入したものの、思い通りにならず「失敗した」と後悔してしまうこともあるかもしれません。失敗しないためのフリーアドレスの運用戦略について、詳しく見ていきましょう。
▶導入前に明確化すべき目的とルール
フリーアドレスを導入するうえで、まずは従業員に理解してもらうことが重要になってきます。というのも、フリーアドレスの環境を整えても、実際に利用する社員の理解がないと活用できません。
導入する目的やルールを明確化し、共有する機会を設けます。オフィスによっても変わってきますが、業務効率や生産性を高めたいのか、長期的なコスト削減なのかも変わってきます。
また、ルールを設定したあとは周囲に認知してもらう必要性も出てきます。導入したあとに従業員の混乱を招かないように、目的やルールを明確にしておきましょう。
▶デジタルツールで「探す」「共有」を効率化
フリーアドレスをより便利に活用するためにも、デジタルツールの導入は欠かせません。例えば、誰がどこに座っているのかわからない「探す」問題は、座席管理システムを導入することで、改善できます。システムによっても異なりますが、主に以下のような機能が利用できます。
・探している相手の名前を入れて検索できる
・空席状況をリアルタイムで把握できる
・打ち合わせのための席の確保ができる
座席管理システムを使えば「探す」「共有」が簡単にできるようになるため、座席がわからなくなる心配もありません。
▶コミュニケーションスペースの設置
集中したいときに、話し声や人の往来がありデメリットに感じることもあるでしょう。意見を積極的に交わしたいときや、仕事の合間にリフレッシュする空間として、コミュニケーションスペースを設置する方法もおすすめです。
社内のコミュニケーションの活性化にも繋がります。
従業員の用途に合わせたスペースを用意することで、それぞれがストレスに感じることなく仕事ができるようになります。コミュニケーションスペースは、緑を取り入れるなどリラックスできる居心地の良い空間を作りましょう。
▶ペーパーレスとデジタルドキュメントの徹底
デスクがないからこそ、ペーパーレスを進めていきましょう。
フリーアドレスをデメリットだと感じる理由のなかに、書類の持ち運びに対して負担に感じるものがあります。離席するたびに書類の持ち運びが必要になります。業務で使用する書類はデータ化しておき、ペーパーレス化を進めます。
また、デジタルドキュメントに保存しておくと、場所を問わずに作業ができるようになります。書類の紛失リスクを低下させることにも繋がり、情報漏洩の心配もなくなります。印刷のコスト削減効果も期待できるなど、オフィスにとってもたくさんのメリットが期待できるようになります。
▶クラウド環境を活かした柔軟な働き方の実現
フリーアドレスこそ、クラウド環境を整えることも重要になってきます。自由に席を移動できるからこそ、ネット環境の整備は欠かせません。ITインフラの整備はもちろん、無線LANを増設し、ツールを積極的に導入していきます。
業務で使用するパソコンをデスクトップから、ノートに変更すると場所を問わずに作業ができるようになり便利です。クラウド環境を整え実用するまでに、社内研修や共有も必要にはなりますが、柔軟な働き方を実現するためにも必要です。従業員に説明する時間を作り理解してもらいましょう。
フリーアドレス導入手順
実際にフリーアドレスを導入するうえで、覚えておいてほしい手順があります。そもそも業種によってフリーアドレスの向き不向きもでてきます。例えば、外出の多い営業職には向いていますが、バックオフィスをメインに行う部署には向きません。
具体的にどのようなポイントに気をつけたらいいのか、導入する上でのポイントも含めて解説していきます。
▶初期調査と計画
フリーアドレスを導入するうえで、まず重要になるのが初期調査です。
せっかく導入したものの、形骸化しないためにも、なぜ導入するのか目的をはっきりとさせていきます。どの部署までフリーアドレスを適応させるのか、業務の効率化に繋がるのかを事前にヒアリングしておきましょう。
また、現在オフィスでどのような問題が起きているのか、解決するべき課題も含めて調査を行いニーズアップすることが大切です。オフィスのレイアウトも考え、集中できるスペースや、ミーティングスペース、リラックススペースなどの計画を進めていきましょう。
▶運用ルールの作成
フリーアドレスの運用ルールを作り、社内で共有しておくことも大切なポイントとなります。従来のオフィスとは違う、フリーアドレスならではのルールも必要になります。個人所有物の取り扱いをどうするのか、ミーティングルームや集中スペースをどう使うか、人数制限など誰でも気持ちよく使えるスペースにするための、運用ルールを作成します。
また、ポータルサイトを活用しながらルールをいつでも確認できる状況を作りましょう。研修や説明会などの場を作り、導入するメリットを社員に伝えることも大切です。例えば、私物や書類の取り扱いについて、専用スペースの保管場所や、座席や机に置くと他の人の迷惑になってしまうため、禁止にするなどのルールを決めておきましょう。
席についても、どうしても固定化してしまう時は、ローテーションを回すなどの対策を行います。時には会社権限で、変化をつけることも必要です。
ルールは何度も見直しながら、自社にあったものを選択できるようにしておきましょう。
必要に応じてネット環境の見直しやツールの導入を進めることも大切です。
▶パイロット運用
フリーアドレスの計画や枠組みができたあとは、試験的にパイロット運用を行います。まずは、特定の部署に導入し、PDCAサイクルを回しながら運用していきます。
実際に導入してみると、改善点なども見えてくると思います。問題やつまずきがあれば改善を行い、うまくまわせるような見直しを行いましょう。パイロット運用中は、従業員の声に耳を傾けるようにしていきましょう。
フリーアドレスが必要だと感じていた部署でも「合わなかった」という声が多く出た場合は、見直しが必要です。
▶全社導入と定期的な見直し

パイロット運用が終わり、何度も見直ししたあとは全社導入へと進めていきます。パイロット運用で得られたデータやフィードバックを参考にして、実際に成功した事例を社内に導入していきます。
導入したあとも、定期的に見直しを行い、従業員が快適な仕事を実現できるようにしなくてはいけません。アンケートを実施し、もっとこうしてほしいなどの声があればできる限りの対策を行いましょう。
フリーアドレスの成功事例
フリーアドレスを導入するうえで、実際に導入し成功した事例を参考にすることも大切です。
2つの成功事例を紹介します。
▶成功事例①:オフィスA社 キューピー株式会社
食品会社で知られる「キューピー株式会社」は、早い段階でフリーアドレスを導入した企業の一つです。生産性の向上や働きやすい環境づくりとして取り入れ、オフィスだけでなく地方の工場にも導入しました。
部門に囚われない情報共有やコミュニケーションを実現し、商品開発のスピードを大幅に高めることにも成功しています。商品開発は、具体的に数年単位でかかると言われていましたが、1年と短縮できるようになったのは、フリーアドレスの影響が大きいでしょう。
▶成功事例②:オフィスB社 パーソルキャリア株式会社
人材事業を行う「パーソルキャリア株式会社」は、オフィスの8割をフリーアドレス化する目標を掲げています。人材の面談もオンラインが増え、機能の見直しが急務になっていました。
オフィスを見直し、固定席の8割をフリーアドレスにしています。空いたスペースは、社員同士のコミュニケーションの場としてカフェを併設するなど活用しています。社長室の前にもフリーアドレスを導入し、経営層とのコミュニケーションが取りやすい環境を作るなど、オフィス環境の最適化に努めています。
まとめ
フリーアドレスは、多様な働き方を実現し、社内の部署の垣根を越えたコミュニケーションの機会を作ります。今までは部署ごとの仕事になってしまい、お互いにどのような仕事をしているのか、問題・課題について知る機会も少なく、明確にできていない部分も多くありました。
フリーアドレスを導入することでメリットもたくさんありますが、目的やルール決めをしっかりと行うことも重要になってきます。現場で仕事をしている社員に理解してもらうこと、共有し働きやすい環境を作り出していきましょう。
フリーアドレスの導入に迷った時は専門家などに相談しつつ、導入を進めていきましょう。
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